事業計画を策定するための基本的知識

目次

事業計画を立てる必要性

事業計画は以下のメリットがあるため、金融機関からの借入など、資金調達をする場面で作成されることが多いです。

  • 計画と実績を比較し、自社の業績の良否を客観的に振り返ることができる
  • 自社の経営状況(数値)の見える化ができ、事業内容が再整理できる
  • 経営のありたい姿を言語化できる
  • 金融機関や投資家に対する定量的な説明ができる
  • 助成金や補助金の申請等をする際にも計画を提出することが求められるため、ベースとなる計画があれば、助成金や補助金を迅速に申請できる

事業計画のフォーマット(ひな型)

会社によって営んでいる事業は違います。また、たとえ同じような事業であったとしても、会社の規模や経営者の考え方によって経営方針は異なります。従って、事業計画は特に決まったフォーマットはありません。

個人事業主(創業)の場合
個人事業主が創業時に融資を受けるために作成する計画はシンプルとなります。創業融資では、いかに創業者が稼ぐことができ、貸しつけたお金の返済が滞ることないかどうかという点に焦点が当てられます。
なお、日本政策金融公庫では、創業融資に用いる創業計画書が用意されているため、まずは下記のフォーマットを利用するとよいでしょう。
フォーマット:https://www.jfc.go.jp/n/service/xls/kaigyou00_220401a.xlsx
記載例:https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyourei01_220401c.pdf


ベンチャー企業の場合
また、ベンチャー企業がベンチャーキャピタル等の投資家から出資を受ける場合の事業計画である場合、提供するサービスや商品の強み、想定する市場規模等といった説明が求められることになります。そして、投資家は投資実行後、計画に基づいて経営がなされており、実際の結果はどうだったかをモニタリングしていきます。従って、事業が計画通りに進捗していない場合には、その理由や対応策を練ることが要請されることになります。

なお、下記サイトでは有名企業(Air BnBやFacebookなどの海外企業ですが)のピッチブック(※)がまとまっているので参考になるでしょう。(https://ppt.kuroko.me/blog/startup-pitch-samples/
※ピッチブックとは多くの投資家などに説明するために作られる資料であり、事業計画のうち、社外秘情報を取り除いたものとなっています

大企業の場合
一方で、大企業では事業規模も大きく、行っている事業が多岐にわたっているため、複雑な事業計画を策定しています。大企業は策定した中期経営計画に基づいて、事業を計画し、ビジネスを遂行していくことで、企業のありたい姿を明確化し、株主に対する経営に関する説明責任の一部を果たしていると言えます。
(KDDIの例:https://www.kddi.com/extlib/files/corporate/ir/library/presentation/2022/pdf/kddi_220513_plan_qpES9Z.pdf

以上より、事業計画を何に用いていくのかによって、計画に記載するべき内容や注力するべき事項は変化していくことになります。

数値計画の重要性

事業計画は定性的な説明(企業コンセプト・経営者の方針・製品の強み等)と定量的な説明で構成されますが、定量的な計画(売上高・利益等)が非常に重要です。

例えば、個人事業主が事業を始める場合、どれくらいの売上が見込まれるのか、それに対する経費はいくら位なのか、初期投資はどれくらいかかるのか等を明確にしなければ、事前に用意するべき資金がわかりません。

ベンチャー企業の場合も定量的な売上高や利益が見えないと、投資するに値する企業かどうかの判断もつきません。

また、計画を作ってみたものの、相当厳しい目標を立てないと利益が出ない計画であれば、その計画は実行すべきではないのかもしれない。という判断ができると思います。

以上の点から、事業計画を数値に落とし込んでいくことは非常に重要なプロセスです。

具体的な数値計画の例(個人事業主が創業するシンプルなケース)

売上計画

上記は、個人事業主が創業する場合に想定する売上の例です。(飲食事業をイメージして作りました)
毎月の売上高、原価などを想定し、どの程度の利益が出るのかをシミュレーションしています。
なお、想定期間は5年としていますが、必ずしも5年の計画である必要はありません。ただし、長期間の計画になるほど、計画の見積の精度が下がってしまう傾向にあるかと思います。

売上から粗利まで
売上高や原価は「単価×人数」で計算できるので、以下の項目を合理的に予測します
 1年でどれくらいの顧客が来店するか(ex ランチ、ディナー、土日来客数の予想)
 1人あたりの客単価はいくらくらいか(ex ラーメン1杯+サイドメニューでどれくらいか)
 1人あたりの原価はいくらか(ex ラーメン1杯+サイドメニューにかかる材料費はどれくらいか)

販売費・管理費
家賃等、固定的に発生する金額が決まっていれば、その金額を入れることになります。

水道光熱費のように営業時間や顧客の数に応じて変動する性質の費用である場合、過去の経験に基づき、設定するのもよいですし、売上高に対する比率で計算するということもできると思います。

人件費はここでは、売上高の30%程度という形で見積もりましたが、具体的な「雇用人数・時間×時給」などから算定するのもよいと思います。

広告宣伝費や消耗品費なども過去の経験に基づいて設定するのもよいですし、広告宣伝費はいくらかけるか、経営方針として決めてしまうのもよいかもしれません。

計画は「単価」「数量」「比率」等の各数値が合理的に説明できる水準であるかどうかが重要です。
例えば、ラーメン屋を経営する場合に、客単価を1万円と設定することには相当の理由が必要になると思いますし、地方にある店舗において都市部並みの集客を見込む場合、数値の根拠がある必要があります。
なお、借入を行う場合、数値の根拠を示せるほど、計画に対する信頼性は高まっていきます。

資金繰り

事業をするためには設備投資や経費の支払い等で支出が収入よりも先行することが一般的です。
例えば、売上の入金が売上月の翌月末、仕入が現金支払である場合、仕入代金を支払うだけの手元現預金がなければ事業運営をしていくことができません。従って、資金繰り状況をチェックしていくことは経営にとって重要です。
なお、厳しい状況になればなるほど、より短い期間(日次など)で資金繰りをモニタリングしていくことになります。

上記の例では、事業開始時点で、設備投資が発生していますが、手元現金が足りていない為、事業運営に必要な資金を含めて300万円の借り入れを行っています。その後は営業黒字が続いているため、借入金を返済したとしても、資金が増えていっているため、資金繰りには問題がない計画といえます。

赤字経営となっている場合には、現預金が減少していくことになるので、資金が尽きないように管理していく必要があります。そして、資金が尽きる可能性がある場合には追加の融資を受けることや、借入金の返済スケジュールを調整してもらうなど、金融機関との調整が必要になるかもしれません。

まとめ

以上、事業計画を作る意義や作るイメージを記載しました。
なかなか、経験がなければ作ることも難しいです。また、高度な計画を策定するためには専門家の助けが必要になることも多いです。ベンチャー企業における事業計画の策定についても別の機会があれば、メモしていきたいと思います。

また、事業計画の策定や税務会計について質問等があれば、専用フォームからお問い合わせいただきますと幸いです。

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